米ドル建てMMFの利回り
米ドル建MMFの利回りは、2023年8月2日現在、野村證券の4.6220%から米国ゴールドマンサックスの4.7930%までと多少のばらつきはありますが、FRBが大幅に政策金利を引き上げた動きを受けて、1年前と比べると全体に3倍以上上昇しています。株式や債券と比べても見劣りしないレベルになってきており、通常の預貯金より利回りが良いだけでなく、前回触れたように、暴落時にも株式や債券ほど影響を受けにくい点はお勧めです。
私も何年も持ち続けながら「なかなか増えないなあ。」と思っていましたが、去年から円安と相まって利益幅が大きくなり、利益(売却していないので、含み益)を確認するのが、「ちょっとうれしい」資産の一つになっています。
デメリットとしては、外貨建ですから、為替リスクはどうしてもつきまといます。
為替リスクとは
「為替リスク」って何?という方もいらっしゃると思います。外貨建商品の場合、購入時より売却時に円が値下がりしていれば、為替差益が発生します。仮に1ドル100円で MMFを購入して、1ドル110円の時点で売却すれば、利回りと別に1ドル当たり10円(実際は約2割の税金が掛かるので約8円)の利益が出る、ということです。
逆に購入時より売却時に円が値上がりしていれば、為替差損が発生します。仮に1ドル100円で MMFを購入して1ドル90円で売却すると、1ドル当たり10円の損失が出てしまいます。これが「為替リスク」です。
更に、MMFを売却して得た利益(売却益)には、20.315%の税金が掛かります。内訳は、「所得税および復興特別所得税」15.315%、「住民税」5%です。MMFで10円の利益が出たとすると、そのうちの2.0315円が税金として引かれ、残りの7.9685円が利益として残ることになります。
先程「MMFはお勧めです。」と言いましたが、MMFも投資商品ですので「絶対に儲かる!」とは限りません。元本割れのリスクは他の投資商品に比べると低いですが、それでも「元本割れなんてとんでもない!」という方にはお勧めできません。購入を検討する際は、あくまでも自己判断、自己責任でお願いします。
数年前にスマホやタブレットを購入してからは、お金の出し入れや売り買い等の処理もサクサクとできるようになりましたが、10年以上前に始めた当時は、いちいちPCを開いて起動させ、やり方を確認しながらでしたので、かなり時間がかかりました。SBI証券や住信SBIネット銀行にも、何度も電話で問い合わせました。
妻の了解を得る
こうして、私のドル建て資産とのお付き合いが始まった訳ですが、丁度MMFを買い始めた2011年から12年の頃、1ドルが80円を割り込むような、今から見ると「超円高」の時期がありました。
為替相場がどう動くか、確かなことは誰にも分からない訳ですが、ドル資産と付き合い始めた私は、分からないなりに「まあ、これだけドルが安くなればいいか。」と、当時の預貯金の幾分かを米ドル建てMMFに替えました。とは言えリスク資産を買うのはやっぱり怖いので、為替の動きを見ながら、何回かに分けて手続きをしました。
米ドル資産を買うに当たっては、もう一つ気にかかることがありました。それは、「妻の了解を得られるか」です。奥様方の多くがそうかもしれませんが、妻は「元本割れのリスクがある」商品を買おうとする私に、簡単にOKを出してはくれません。藤巻氏の懸念を伝えようにも、妻に「だから何?」と言われてしまうと、なかなかそれ以上押せません。
幸い、妻は当時小遣い稼ぎにFXの勉強をしていました。「FXよりは、確実に利益を出せる」可能性と、円が暴落するかもしれないリスクを根気よく伝え続けて、どうにか妻の了解を得ることができました。その後ドルの相場が持ち直し、ドル買い付けの「お得感」は減りましたが、私は毎月少しずつ、ボーナス時には少し多く、MMFの買い付けを続けました。
私は藤巻氏に大きく影響を受けているので、ドル資産と付き合い始めて10年以上経った今でも、米ドル建MMFは私の資産のかなりの割合を占めています。
その後、米ドルが値上がりした
「ドルの相場が持ち直す(円の値段が下がる)」ということは、保有しているドル資産の価値が増える、ということです。同時に「ドル資産を買う」立場からすると、今までと同じ額の円を投資しても、買えるドルの額が今までより少なくなる、ということになります。
MMFを買い始めてからは、毎週末ネット証券のホームページを開いて、評価額(日本円でいくらになるか)を確認するのが日課になりました。ドルが強くなって評価額が増えると嬉しくなり、円が強くなって評価額が下がるとがっかりする。そんな、今までとちょっと違う感情の動きが、私の日常に加わりました。
更にMMFは1ヶ月複利で増えるので、ホームページには、「再投資」の金額も増えていきます。それも運用の励みになりました。その後何年かして、ある程度まとまった金額の支出が必要になった時、たまたま1ドルが110円程度に上がりました。この時やっと妻に、米ドル建て資産運用のメリットを少し理解してもらえたと思います。
「特定口座」で運用すると、面倒な確定申告が不要
米ドル建てMMFの売買をするには、証券会社に口座を開く必要があることを2日目に書きましたが、証券会社の口座には種類があります。
MMFや株式を含めて、証券会社で資産を運用して得られた利益(売却益や配当金など)には基本的に税金が掛かります。(ご存じの方も多いと思いますが、「NISA」など一定の条件の元で運用益が非課税になる制度もあります。)
税金の計算や手続きを全て自分で行う口座があり、これを「一般口座」と言います。税金の計算や手続きを証券会社が代行してくれる口座というのもあり、これを「特定口座」と言います。
更にその「特定口座」にも種類があって、「源泉徴収なし」の口座を選択すると、年間20万円以上の運用益が出た場合には、自分で確定申告をする必要があります。「源泉徴収あり」の口座を選択した場合には、確定申告まで証券会社が代行してくれます。
ちなみに私は、「源泉徴収あり」の特定口座を利用しています。
ニュースの為替相場に注意を払うようになった
MMFを買うようになってから、私の中の変化として、毎日のニュースの為替相場に注意を払うようになった、ということがあります。
ドル資産を買おうとしている時には、ドルが値下がり(円が値上がり)しているとうれしくなります。同じ金額の円で買えるドルが増えるからです。逆にドルが値上がり(円が値下がり)していると、がっかりします。同じ金額で買えるドルが、ドル安の時と比べて減ってしまうからです。
ドルを売ろうとしている時には、この逆になります。
オーストラリアドルも買ったけど・・・
米ドル建てMMFの購入を始めてしばらくした頃、「アメリカ一国だけでなく、複数の国に分散投資した方がいい。天然資源が豊富で、流動性リスクがある程度低い国がお勧め」というような情報を投資関係の書籍か雑誌で見ました。
「流動性リスク」というのは、市場(マーケット)規模や取引量が小さい場合や市場混乱時など買い手が少なくなった場合に、①換金したい時に換金できない、②換金したい量に対し需要が少なく一部しか換金できない、③買い手が少なく大幅な値引きをしなくては換金ができない、といったことが起こるリスクのこと(「ピクテ投信投資顧問株式会社」のHPより)
マーケットで売買が成立するためには、買う際には売りたい相手、売る際には買いたい相手が必要です。人口が少なくて市場規模が限られていたり、規制が厳しかったりする国の通貨では、相手が見つからず、思うようなタイミングで売買ができない可能性があります。これが「流動性リスク」です。
私は、天然資源に恵まれて、ある程度の市場規模がある国としてオーストラリアがいいと考え、オーストラリアドル建てのMMFを少額購入してみたことがあります。結果から言うと、豪ドルでの運用は思ったような成果を出せませんでした。オーストラリア中央銀行の方針もあり、オーストラリアドルの為替相場は、購入後5年ほど下がる一方でした。
私の豪ドルMMFは、「先を見通せなかった運用の教訓」として数年間塩漬け(放置)状態になっていましたが、「これから先も上がる見通しなし!」と判断して、2020年の8月に全額を売却しました。今以上の損失を避けるための売り、いわゆる「損切り」をしたわけです。